今は副業は複業の時代

今は「副業」ではなく「複業」の時代だという。
一つの肩書きにしばられず、趣味や興味を仕事に広げることが出来る。なにより、自由な時間をどう過ごすかが、その人の暮らしぶりを輝かせる鍵になる。

「好きなことをするのがいちばん」——それはシンプルだけど、とても力強い言葉だ。
たとえば、ひとり暮らしのなかでの静かな時間。そこにそっと寄り添ってくれるのは、趣味という小さな灯りかもしれない。

手芸や絵画、料理に俳句。どれでもいい。時間を忘れて没頭できるものがある人は、どこかしら、しなやかで強い。
もっとも、「自分の好きなことがわからない」という声を耳にすることもある。そんなときは、ふと子どもの頃の記憶をたどってみるといい。夢中になった遊び、何度も繰り返し描いた絵、細かい作業がやけに楽しかった日のこと。

ある人は、大人になって忘れてしまった手芸を、ふたたび始めてみた。
今は、天然の花の姿を布で表現する「布花作り」に夢中になっている。薄絹や綿の布を染め、こてを使って形を整え、一枚一枚、花びらを仕上げていく。指先に集中していると、心がスッと落ち着いてくるのがわかる。何かを考えすぎてぐるぐるしているときも、ふしぎと静かになれる。

しかも、あえて難しいものに挑戦すると、完成したときの喜びはひとしお。
「できた」という手応えは、自信とはまた違う、もっと静かな満足感をもたらしてくれる。

好きなことに向かう時間は、何かを生産するためというよりも、むしろ、自分をひとつにまとめ直す時間なのかもしれない。
趣味は、暮らしのなかにある静かなよろこび。そのよろこびが、今日という一日に少しだけ色を足してくれる。

「複業」という選択は、ひとつの肩書きや職業だけに縛られず、いくつもの役割や顔を持ちながら生きることになる。それは単に収入を増やすだけではなく、自分の世界を広げ、人生に多層的な彩りを添えることにもつながる。

そして何より大切なのは、自由に使える時間をどう過ごすか。小さなビジネスを通して、人とつながり、学び、挑戦する。その積み重ねが暮らしを輝かせ、心の余裕となって返ってくるのではないか。

「働く」ことを収入のためだけに閉じ込めず、生活を豊かにする遊び心を加える。それがこれからの「複業時代」の生き方ではないだろうか。

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